お買い物の失敗２点～美のコラージュ

【２月１７日】悉皆屋さん＠近所
きょうのお引き取り：１月に依頼した洗い張り。悉皆屋さん曰く綸子とのこと。
　　　　　　　　　　ストライプに高低があり、角度によって色味が変わる生地。
　　　　　　　　　　表裏共で7500円。
きょうの依頼：この間解いた紬の洗い張り。全部解いたつもりだったが、
　　　　　　　袖が解けていなかったことが、現地で判明。これまた予価7500円。
※この二点に共通するのは、寸法バッチリ、生地もいい、すぐに着られると思って買ったのに、裏地が縮んだのか、表地に袋が入ってしまっていて、結局即戦力にならなかったという「お買い物の失敗」。
※これに懲りて、これからは気をつけよう。

※思い直して
※先日、美輪明宏講師によるNHK人間講座テキストについて書いたが、ちょっと心に引っかかるものが残っていた。以前に舞台を見たとき、「明らかにダリの絵」としかいいようのない舞台装置だったので、「あんまりにも、わかりすぎじゃないか？」と感じたのだった。
※テキストでは、美輪講師は、自分の思う「美」のイメージを舞台装置に具現化するとき、他者に依頼すると自分のイメージとずれるので、衣裳他全て自分でやることになったということだった。
※これはある意味危険なのではないか？というのも、これは「美」であると認めるものを並列に扱っても、それぞれが拮抗して、殺し合ってしまうのではないかと思うのだ。しかも「私の美の世界」から抜けられない可能性もある。
※イメージするものを、最も効果的に見せるテクニックみたいなものが、舞台装置の専門家にはあるのだろうし、それはたとえば、イメージは「ダリの絵だ！」と決めても、それをそのまま舞台に乗せることはしないだろう。
※演者・衣裳・照明などなどとの兼ね合いで、弱めたり、デフォルメしたり、そういう「見せ方」のテクニックこそが、その筋の専門家ならではのチカラなんじゃないだろうか。
※舞台上に並べる家具も、ルイ17世風と決めたら、その本物を使う、と講師はおっしゃるが、舞台上では「ハリボテ」でも、また時代が異なっていても、かえって効果的な場合もあるかもしれない。
※自分のおうちなら「これが美！」オンパレードでもいいのかもしれないが、演劇は「伝えたいこと」というのがあって、何が最優先かが決まれば、その他の要素は若干弱めたり、変形させたり、トータルで決めて行かなくちゃならないと思う。全部本物だから、舞台そのものも本物になる、というわけでもないような気がする。
※こういうことを考えたのは、「あからさまにダリの絵」の舞台装置を見たとき、ちょっと陳腐で笑ってしまったからだった。なんだろう、咀嚼して消化して自分なりのものに生まれ変わらせていないという感じがしたのだ。「私が美と認めるもののコラージュ」にしか過ぎないとでもいおうか。

※思うに、美輪講師はまじめで、本当にまっすぐな人なんだろうと思う。だから舞台もわかりやすかったし、考え方も筋が通っている。だけど、舞台というのはある意味、今ここで「今でもここでもない時空」へ観客を連れて行く「化かし」みたいなものだから、観客をその気にさせる手練手管は「正しい」「美しい」という基準では測れないもなのじゃないだろうか。「うまくだます」方法は、だまされる方がその手法に気づかないようなものだろう。
※「誰かうまい嘘のつける　相手さがすのぉぉぉよぉぉぉ～♪」
（そして、神戸）
※で、こじつけかもしれないが、着物の着こなしの話になる。
※好きな着物と好きな帯・足袋・履物と組み合わせても、必ず成功するとは限らないのは、舞台と同じなのかもしれない。私の場合、強烈なもの・間抜けなもの・笑えるものが好きなので、それらを全て組み合わせたら満艦飾の最上級になることは必至である。逆に、地味好みのひとが好きなものばかり組み合わせたら、とことん暗～く沈んでいくだろう。
※舞台でいえば「伝えたいこと」、着るものでいえば「一番アッピールしたいもの」を中心に、その他の周辺機器を弱めたり、デフォルメしたり（着物の場合は色のトーンを変えてみたり）など、強弱と「ひねり」みたいなものを加えることが必要なんだろう。
※満艦飾で「笑ってください」という場合でも、やっぱり、強弱は必要なのだ。正司敏江ちゃんの振袖姿などは、一瞬「全身満艦飾」かと思うが、実は髪型はベリーショート、ちゃんと着るものとの強弱はつけている。あれで日本髪を結っていたら、笑えないだろう。
※美輪講師の装いは、そんなわけで「笑えない」。「私の美」のコラージュは、ちょっと息が詰まりそうになるのもまた事実である。それが「まじめ」ということなのだと思う。
※ひょっとして、美はコラージュではなくハーモニーによって輝くものなのではないだろうか？

タグ：美 ミス