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おのぼりさん2日目~迷い道

5月20日
※朝から夫は仕事だ。一緒に早めに起きて、ホテルの無料朝食に行く。なんせ安い料金設定なので、コンシェルジェ前の空間に一時的テーブルが並べられ、セルフサービスでパンや珈琲を取り、壁際のカウンターに座って、壁を見ながら朝食をとる。新聞は実費で買うシステム。合理的だし、価格なりのシステムだが、優雅さは皆無。
※最近旅行をしていなかったので、感動したことが一つ。シャワーの適温が決まったら、シャワーヘッドのてっぺんのボタンを押すと、一時停止になって、そのまま適温がキープされる仕組み。これって、すでに珍しくない機能なんだろうと思うが、私は浦島太郎なので簡単に感動した。
※夫が出かけたあと、着物を着始める。この日はお友達に目黒の「時代布 池田」に連れて行ってもらい、先日入手の絽のお引きずりの仕立てが珍しいものかどうか、見てもらうことになっていた。最初、本当に着た切り雀でいいや、と思っていたのだが、あの「池田」に行くのだし、ちょっとは古い目の着物を着た方がいいのかなと思って、一セットだけ持ってきていたのを着る。

きょうの着物:淡オレンジ色地七宝紋錦紗にダリヤ・スズラン・チュウリップなど
       の手描き付下げ・古着屋で7800円を6500円にオマケしてもらった
       もの。袂が長い。さらに、この着物の変なところは前にしか
       模様がなく、後ろから見ると色無地みたいなのだが、一つ紋付き。
       奢侈禁止令がでたあとのものかもしれない。
きょうのズル:この袖丈の長襦袢は袷しかなく、すでに気温が高く
       とても着る気になれなかったので、半襦袢に半衿だけ付けたもので
       ごまかした。昨年あたりだったかの「おしゃれ工房」で
       市田ひろみ先生がオススメしていた方法で、それに対して私は
       「余りにもだらしない」と批判した方法だ。すみません。
       本当は、こういう手抜きはダメですよ。

きょうの半衿:白地塩瀬に花の刺繍。中古。500円。
きょうの帯:白地に金花唐草の織り名古屋帯。龍村風だが、そこはかとなく
      偽物臭さが漂う。古着屋の山から掘り出して7800えんだったか。
きょうの帯揚げ:黄緑基調のラメ入り綸子。いただき物。
きょうの帯締め:ダークブルーの幅広。いただき物。
きょうの履物:黒漆に手毬の染め船底台に黄色縮緬鼻緒。
きょうのバッグ:緑地に花々のビーズハンドバッグとサブバッグ。
きょうの足袋:レース足袋その2。

※狭いホテルの部屋で鏡無しで着替えるというのも、先だって「似あわねー着物を着る実験」をやっていたおかげで、比較的苦にならなかった。さらにいえば、今回着物で遠出し、連泊するというのも初めての体験だったのだが、洋服で行って着物を持っていくより、着付け道具が最初から体にくっついている方が忘れ物がなくてよかったと思う。問題は三面鏡がないので髪を結うのに苦労したことか。まあ、なんとかなるものだ。
※半蔵門線から乗り換えてJR目黒でお友達に落ち合い、久方ぶりの再会を喜ぶ。余談だが、私は道には迷うが、交通機関はオッケーだった。町の子なので、こういうのは得意なのだと、このたび気づいた。駅にさえたどり着ければ、こっちのものである。駅にさえ・・・・。これは後日、えらいことになる。
※「時代布 池田」の前で記念写真を撮ってもらう。とても嬉しそうに写っている。しかし、中に入るとなんというか、手の届かない価格帯で私とは関係ない世界であった。あら素敵と思うと65000円、ちょっと汚れが気になるが辛抱できないこともないが素敵な柄、というので39000円。しかし後で聞いたところに寄ると、よそはもっと高いらしい。

買いもしないのに、質問だけする。件の絽のお引きずりを見てもらうが、特に珍しい仕立てではないそうで、解いてもいいとわかった。裏についていた布は綿ではなく麻だということも教えていただいた。
※先日、当日記で夏物のお引きずりの仕立て方情報を募集したところ、ご親切な方が参考文献を引用して送って下さったのでご紹介。
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『美しいキモノ2001年秋号』『花街のきものメモワール・京都編』pp315-319
文:山下悦子 より
・・・・この月(5月)からひとえに替わるのが京都の舞妓のきまり。舞妓のひとえ仕立ては、身頃は袷で、袖はひとえ仕立て。振袖の裾ふきを二分出すので「ひとえ袷」というのだろう。裏をつけて一重仕立てにするのは、丈夫なための用心である。これに対し、芸妓のひとえは六月と九月で、季節は民間と同じだが、袖口と裾を毛抜仕立てにしたものを着る。毛抜き仕立てというのは、裏の布(ふき)を出さず、揃えて仕立てる方法で、今は一般にはない。これらの古風な仕立て方は、立ち居振舞いにきものがひらつかす、手を上げても袖口の裏が見えない。引き着では、歩くときに前裾が三角形に返って、褄裏が見えるので、八掛をつけるのだ。江戸時代からの引きずりの着装が、一般では、すべておはしょりをする着付けに変わったとき、ひとえ仕立てに八掛を付けるという風習は失われたと考えられる。(中略)この夏物の仕立ても舞妓の引き着には特徴がある。汗での傷みを少なくするための輸出羽二重の肩当てを、背に掛けて付ける。袖口は毛抜き仕立ての共布、袖振りは一分ほど出した共布を付ける。
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※手元にある絽の着物は、私はすっかり折り返しだと思っていたのだが、共八掛をつけてあって、2分ほどふきがでている。袖口は1分、ふきがでている。芸妓の単衣は毛抜き仕立てということだから、これは舞妓のものだったのか?裏地も背だけではなく、前身頃にまでついているので、基本は同じだが、若干マイナーチェンジが見られるもののようだ。
※上記の雑誌は、おそらく私の部屋にもあるはずなのだが、開かずの間というか、むやみに近寄ると危険な状態のため、まだ確認できていない。資料整理はちゃんとしとかなくては、こういうとき困るんですよね。しかし今回はご親切な方のおかげで助かりました。本当にありがとうございました。

※池田を退店し、ちょっと買えそうな値段だった帯のことをくよくよ思いながらお昼ご飯とデザートをいただく。その後、お友達のお宅におじゃまして、同時期に別々に入手したそっくりさん着物(八端)を着て撮影するという企画を実行。写真に撮ってみると、紙風船の大きさが、そのまま人間の大きさの比率で、遠近法を説明する画像のようだ。また、お手持ちの履物も見せていただいて、和装履物保有実態調査にも協力していただく。
※旦那様も参加していただいて、あれこれお話を楽しむ。ご飯を作らなくていいとか、売り上げ計算しなくていいとか、もう信じられないくらいありがたい時間を、さらに心づくしのおもてなしで、お大尽気分で、ついつい長居をしてしまった。
※駅までタクシーを呼んでもらい、東急で東京に戻る。前日の経験で、地下鉄は終電が早いとわかっていたので、代々木で乗り換えてお茶の水に出る。駅前に若いお巡りさんがいたので、この道をまっすぐ歩けば神保町に出られますよね?と確認、お巡りさんは「お気をつけて」と見送ってくれた。よほど頼りなく見えたらしい。
※オフィスが多く、人の気配はないが、同時に変な人もいないので、安心して歩く。無事到着。ホテルの部屋は鍵が一個しかないので、夫は私が帰るまで寝られない。申し訳ない。
※夫の悲劇、ここまでおさらい。
1,旅行鞄の取っ手がちぎれる
2,カートが異常な高値
3,めくるめく一夜を私の闖入でぶちこわし
4,私が帰るまで寝られない
実は、これだけでは終わらなかったのだ・・・・。

※思い出して追記
※前日、偶然見つけたもう一軒の「珈琲エリカ」。ホテルを出てから、フラフラと向かい、コーヒーを飲む。エリカ制覇した、という満足感に満たされる。ちょっとおかしい。
※水道橋の駅に向かうはずが、なぜかお茶の水に出てしまう。わけがわからないので、結局神保町に引き返し、目黒に向かった。この時点ですでに、方向音痴が発揮され、最終日のえらいことを予感させるが、本人はまだよくわかっていなかった。
タグ:旅行 裾模様

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