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しつこく

2月10日

※写真倉庫、更新しました。


※松竹座で仁左衛門の歌舞伎。夜の部は忠臣蔵番外編みたいなもので、公演前から仁左衛門さんがテレビで宣伝しつつ解説してくれていたので、観る前からだいたい把握はできていたのだが、チラシの写真の浪人の胸元にある帯が、いったい何を表しているのかは本編を観るまでわからず、知ってぞっとした。詳しくはこちら 。基本的に本当に悪い人は出てこない芝居なのだが、他力本願というか、人を利用して自分の手柄にしようとすると悲劇が起こる。仁左衛門さんの、前半と後半の人格の変化もすごかったが、忠義者の坂東薪車、実は小心者の三五郎役の愛之助はじめ、周囲を固める人たちも力が入っていて、とても見応えがあった。ばんばん人を切るのが見せ場の一つなのだが、前日に雷蔵の「大殺陣雄呂血」における二百人切りを観たばかりだったので、ちょっとタイミングが悪かったように思う。しかし雷蔵のは数はすごかったが、仁左衛門のは「しつこさ」がすごかった。もう死んでるやろ、という人に何度も切りつけるのである。それくらい恨みが積もっているのだ。…が恨みだけでもなく、その斬り殺した相手に、ものすごく惚れてもいるので話がややこしい。愛と憎しみは表裏一体、おおこわ。

※最近、席運がよく今回は花道脇。近所で役者さんやその扮装が観られるのが嬉しい。先月に引き続き、今日の松竹座は和装率が高い。歌舞伎だと着物着てくる人が多いけれど、それ以外の演し物だとグンと減る。別に歌舞伎でなくても、着ていいと思うのだが。



※終演後、ちょいといっぱい引っかけにいったら、すごい話を聞いた。近鉄沿線にある喫茶店のマスターはスーパーカブで東京日帰りするのだそうだ。という話から、その人の店や人となりを聞き、唸ってしまった。まずものすごく珍しいバイクを三台保有しているらしい。マニア垂涎、といったものらしいが、乗るのはスーパーカブ。経営している喫茶店の珈琲は最低価格900円、最高は7万5000円。一滴一滴ぽとぽと抽出したものをさらに熟成させるかなんかで、ヴィンテージになっているらしい。カップはマイセン、お水はバカラのグラスで出てくるらしい。さらにすごいのはマスター自作の詩の朗読もあるらしい。特殊な店だが熱心なファンがいるらしく、遠くから夜行バスで来るお客もいて、そのために夜中の3時まで開けているとか。修行のつもりで行ってみたら?と勧められ、ちょっとその気になっている私であった。

※もう一人、早くから飲んでいる女性客がいて、この人の思春期の人格形成の基本は梶芽衣子(の演じる女)だったそうだ。私などは「女囚さそり」を30過ぎてからやっと観る機会に恵まれたが、この人は70年代にお父ちゃんがビデオに録画していたのを、こっそり観ていたらしい。10代の少女のあこがれや目標が「さそり」だったって、すごいねえ。思い返せば私にはそういうモデルもなかったし、しいていえば「冒険者たち」という映画の中のレティシアみたいになれたらいいなと思っていたが、フランス人になるのはまあ無理だし、そういう風になるにはどうしたらいいか、という努力目標も持たず、ただなんとなく生きていたなあ。というか、受験だとか家内宗教戦争だとか、外部からやってくる災難に抗うのに精一杯で、せいぜい現実逃避でアニメにのめり込んだくらいだ。そして、その結果、格好いい女の人になることはなく、しつこく「あしたのジョー」が好きで、明日の、映画の公開をたのしみに待つ中年女となったのであった。
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