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衣裳のミイラと、生きられたことのない衣裳と。~鼻緒裏だけは上等で~モスラ帯がこんなところに

【12月18日】ブックレビュー?「すぐわかる きものの美」
すぐわかるきものの美―髪飾...<監修 道明三保子>東京美術:発行
※オールカラーなのでわかりやすいが、その分高い。1900円。
※監修者は、名字でピンと来ると思うが、組紐の「道明」にお嫁に来た方で、服飾史研究者。文化女子大の先生だそうだ。
※そのせいか、美術展の図録でよく見かける「○○博物館蔵」の着物が多数掲載されている。美術展めぐりをしないですむ、お得な本かもしれない。
※ところがそれ以外は、現行商品になる。(たとえば長襦袢だったら日本画に描かれている明治~大正期のものから、突然、紫織庵の商品にまで飛ぶ。)つまり、古い昔に誰かが着たが、今は収蔵されているものか、描かれたことはあるが、「今後誰も着ることのない衣裳」と、商品として生まれて、「まだ誰も着たことのない衣裳」が並んでいるというわけだ。
※収蔵されてしまった衣裳は美術品という扱いで、まあ、衣裳のミイラのようなもの、まだ商品でしかないものは、「生きられたことのない」衣裳だと私は思う。
※江戸時代と平成時代のものの間の、実際に着られ、いまだに現役あるいは復帰可能なものが、この本の中にはほとんど見られない。たとえば、あれだけ多くの女性が着た「お召し」がほとんど取り扱われないのはどういうことなのか?日常着には「きものの美」はないということなのか?銘仙だけは昨今の流行もあって、多少取り上げられてはいるが。
※本当になんにも知らない人には「目で見てわかる服飾史」としてお勧めの一冊。だが、着物を楽しむ実感とは、少し距離があるように思う。美術関係の出版社だから、仕方がないのだろう。
※服飾関係の先生は、視覚が先行してしまうのか、「着ることの喜び」が後回しになってしまうことが多いように思える。職業病か?

※調べもの@博物館地下収蔵庫
きょうの課題:先日調べきれなかった、京都女性の和装履物詳細
きょうの成果:とりあえず、リストアップしたものは見直した。
※いやー、履き倒した下駄の歯は、ああいう形に変形するのか、と得心した。単にすり減っていくのではなく、地面で削れた部分が歯の周囲にせり上がって付着しているという状態。ゴム裏が付いていなかった頃のものだし、使用頻度もかなり高かったので、手入れする間もなくあの状態になったのだろう。
※もうひとつ、本当に使ったものだからこそ、という状態が見られたのは「爪革」。先っぽ裏が地面に擦れて、表面はボロボロ。今の時代であそこまで使う人はいるのだろうか。
※台自体は特に高級品ではなかったように思うが、名の通った店で買っていて、鼻緒はほとんど裏が本天だった。やはり、素足に履くには本天でなければ皮膚が擦りむけるのだろう。今の浴衣三点セットについているテキトーな下駄の鼻緒の裏は、安物だから当然テキトーな生地が使ってあって、慣れないお嬢さんの足の甲を削り取る。素足→カジュアル=安物でいい、ということではない。素足だからこそ、いい素材のものを皮膚にあてがわなければエライ目に遭う。浴衣は2000円のでいいから、鼻緒は上等にしてね。

※いやはやビックリ
「不思議面白古裂館」という本を見つけて、家で見ていたら、45頁右上に私の持っている「モスラ帯」が掲載されていた。生き別れになった姉妹に会ったような気持ちだ(川端康成「古都」?)。
タグ:履物

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