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蛮族は国内にあり

【5月16日】
※今日の朝日新聞朝刊・投書欄より引用
<パソコン上で売られる和服>
「 パソコンでオークションサイトをのぞくと、日本人のタンスに眠っていた和服を2,3千円で外国人が落札、『輸出』されている。ざっとみたところ、かつては20~50万円で誂えたであろうと思われる品だ。染めの出来栄え、絞りの手間も一級品のものが多い。
 出品しているのは、古物・古着業者と思しき人々である。和服離れのまま世代交代が進み、とりあえず現金にするために市場に出したのだろう。
 かつて浮世絵などの伝統文化財が海外に散逸した。絵画なら壁に飾られ、美術館に引き取られることもあったろう。だが、こうして取引される着物が、どのように扱われていくのかは想像できない。染め・絞りや織りの職人の技があまりに安く評価され、ついにはそのやり遂げた仕事も、この国から消え去るのかと思うと暗澹たる気持ちになる。
 父は東京・銀座で長く呉服商を営んできた。年寄りながらパソコンを活用しているが、この現象を見て、寂しげである。」

※不思議に思ったこと。落札しているのが「外国人」だとなぜわかったのだろう。まさかとは思うがヤフオクを見て、ログイン名がアルファベットだったため、全員外国人だと思ったのだろうか。もしヤフオクでないのなら、「一級の品」が2,3千円で落札終了するような穴場サイトがあるのだろうか。もしそうなら教えてもらいたいものだ。
※もしも本当に外国に「輸出」されているなら、まだ救いがあるかもしれないと私なぞは思う。だって、ひとまず原型のまま飾って楽しむ空間があるおうちへ行けば、切り刻まれることはないからだ。一番恐れるべきは国内の、切り刻む人々の方である。
※浮世絵にしても、かえって海外に流出したからこそ現在の評価があるとも言えるわけで、そんなに外国人を蛮族のように警戒しなくてもよいと思う。かえって、日本の染色技術を正当に評価する、客観的な目を持っているかもしれないではないか。
※切り刻む蛮族は国内にいるのである。そこから一時避難させることになるのだとしたら、「輸出」も悪いことではなかろう。

※もうひとつ。本当に出品物が「一級品」なら、2,3千円では終わらないだろう。技術は高いがセンスが悪いものか、保存状態がよくないか、何か理由があるはずだ。一級品も保存とセンスが悪ければ三級品である。
※また、「とりあえず現金化するために」市場に流れているのではなく、家の中の邪魔者扱いされて追い出された着物も多いはずだ。実際、業者に引き取ってもらっても雀の涙にしかならないわけで、それでも引き取ってもらうのは、持っていても仕方がないもの、と見なされたからに他ならない。
※本当はもとの持ち主が着てくれるのが一番いいのだけれど、当人が亡くなったとか、シミシミで手入れする気もないとか、体が不自由になって着られなくなったとか、呉服屋にだまされて好きじゃないものを買わされたので見たくもないとか、いろんな事情があるだろう。
※誰かの趣味に合わなかったものが死蔵されたままよりは、ほかの誰かに回った方がいいだろう。着てくれるという条件付だが。それが、もとの価格と比べて格段に安かったり、意外な高値になったとしても、古物の取引というのはそういうものだ。
※そもそも、着物が「家の中の邪魔者」になってしまった経緯が認識されていない。高価なよそいきばっかり作って売ったから、普段着られるものではなくなってしまって、もう誰も着なくなったのじゃないのか。
※結果の前には原因があるのだ。そして、その原因の一端をになった人々もいるのだ。現状を嘆く前に、現状をもっと正確に把握すること、そして経緯を厳密に認識しなければ、単なる、第三者的かつ情緒的な嘆きで終わってしまう。海外流出がイカンというのなら、自分自身は今後いかなる流出を食い止める行動が取れるのか(嫁ハンに帯の一本でも買って、着たら誉めるとか)、寂しげなお父さんは、この現象と無関係なのか(売り方に無理や偏向はなかったかの吟味)、もうちょっと考えるべきことはあるように思う。
タグ:呉服屋
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