SSブログ

ほとんど化学の実験

【9月7日

きょうの発見:「洗濯・汚点抜・磨物」山崎敏一・著 昭和8年 文光社

※家の中の衣類・器具の手入れに関する古本が、また開かずの間から発見された。著者による序文を引用すると

●主婦が一家を経営して行く上に於て、衣類整理・器具の手入は割烹と共に重要なる地位を占めてゐることは、何人も首肯せられる所であらう。其の巧拙は、審美的・衛生的・経済的各方面に大なる関係を有するものである。然らば、此等の基礎的実習は、学校に於いて家事科の時間に充分鍛錬しておかねばならぬではあるまいか。
●家事教授上実習の重んずべきことは、法令の上に明示せられてある。而して、洗濯・磨物は割烹と共に実習の両翼たるも拘はらず、割烹実習のみを偏重し、洗濯・磨物等の実習を軽視する傾向のあるのは、頗る遺憾とする所である。
●著者は、ここに見る所あり、多年研究し、経験してきたものから、簡易にして、実用的なる洗濯・汚点抜・磨物に就て述べることゝした。本書が即ちこれである。本書は、女子専門学校・女子市販学校・高等女学校等の家事実習指導書として恰好のものであると共に、一般家庭の主婦の為めにも、よき指針であることは、筆者のひそかに信ずる所である。
●記事中奏効せざるものはない積りであるが、若し左様のことがあり、又は不明の点があらば、御質問願ひたい。
●かくて斯界に多少たりとも貢献することを得ば、著者の光榮とする所である。
  昭和八年四月    著者識す


※昭和一桁時代ですでに、調理実習は学校で行うが、衣類のお手入れ実習については軽視されていたことに、著者は不満を述べている。おそらく各家庭で習慣として、口伝で教えられることであって、学校で教えるほどのことではないというのが一般の考えだったのだろう。私たちの時代でも、調理実習はあっても洗濯実習はなかった。この流れゆえに、テキトーな親の元に生まれた子はテキトーな洗濯方法を踏襲するだろうし、潔癖性の親の子は潔癖洗濯を踏襲していく。今から振り返るに、二槽式洗濯機の時代、今から30年くらい前、うちでは一回洗剤を入れずに水だけでゆすいで、それから洗剤液で洗っていた。母がそうしていたからだが、それは意味があったのだろうか。そういう、各家庭ごとに違う洗濯方法の標準を示す指針を、著者は示そうとしたのであろう。間違った方法をとったがために、着物をダメにしてしまうことも防げるし。
※洗濯に必要な道具類は画像で示したが、今の私たちにも役に立ちそうな記述と、ちょっと面白い記述を、以下に引用する。

●糊抜きはなんのためにするか
1,糊が付いていると、折り目になった所から繊維が傷みやすい
2,糊が付いていると、仕立てに狂いが生じやすい
3,糊抜きによって、布全体が柔らかとなり、光沢が出る。
4,糊抜きによって、保存中にシミや黴が生じにくく、
  もしシミができても落としやすく、変色もしにくい。

●糊抜きの方法
1,摂氏60℃程度の熱湯6リットルに酢酸0.015リットル(盃半分)
  またはお酢0.2リットルの液に布を屏風状にして入れ、約10分浸し、
 これを押さえつけるようにして糊気を抜く。
2,抜けたら、皺にしないように2,3回水洗い。そのまま絞らないで
  張手(画像参照・木や柱に結びつけた器具で地面と水平に伸ばして干す)に
  はさんで乾かす。あとはアイロン仕上げ。

●湯通しと糊抜きの違い
1,糊気のない布でも、仕立てに狂いが生じないように、
  また生地の風合いを良くするために湯通しする。
2,しかし水温は3,40℃くらいで、酸は不要、水すすぎも不要。

●アイロンの熱度 音による見分け方
今はダイヤル設定で、ランプが消えたらオッケーだが、サーモスタットが
なかった頃は、「唾液又は水を左手指頭にたっぷりつけて、
アイロンの底金に手早く当てて」、その時発する音で判断していた。

1,音なし・ヂュー・ブシュッ 皺が充分伸びない。
2,バシッ・プシッ 毛織物に適した温度。
3,プチッ 一般の仕上げ物、銘仙類・木綿・ワイシャツに適している。
4,ピュッ・ツパッ 蒸しアイロン仕上げに用いる。あて布要。
5,チュッ・音なし 強すぎてかけられない。焦げやすい。

※2のプシッと3のプチッの区別が難しそうである。

●銘仙類の洗濯
1,衿の垢汚れは揮発油で拭く。シミの部分にも揮発油をかけ、
  手のひらで軽く揉み、布端を持って上下に強く振って揮発油分を取り去る。
2,洗うときはマルセル石鹸液に少し浸し、別器に濃いめの石鹸液をつくり、
  刷毛で少しずつ洗い、その後何度か水を換えてすすぐ。
  最後に酢酸を水4リットルに対して0.01リットルをいれて色止め。
3,布一反に対してゼラチン一枚の割合でふやかしておき、熱湯1リットルで糊を作り、
  さらに二倍に薄めて使う。糊の滓を取り除いて別の容器に入れ、布を浸し、
  幾度も裏返して平均につける。
4,軽く押し絞りして乾かす。乾燥後、霧を吹いて堅く巻き付け、
  全体に湿りが廻ったら、手伸しでだいたいの皺を伸ばし、次にアイロン。
  まず横、次に縦にかける。

●大島類の注意点
1,大島類は、平常、襟垢をとる際にも、決して揮発油で擦ってはならぬ。
  大島の渋木エキス染料は、揮発油の摩擦に脱色する性質がある。
2,普通は銘仙類と同じでいいが、石鹸中のアルカリに変色しやすいから、
  布一反につきサイカチ1,2本、温湯2リットルの割合の
  中性洗剤洗濯液をつくり、これで刷毛洗いする。サイカチの代わりに
  椿油の絞りかすでも良い。その後は糊を布海苔にする以外は、
  だいたい銘仙と同じ。

※サイカチも椿油の絞りかすも手に入りませんので、今自分で大島は洗えないということですな。しかし椿油そのものは手に入るので代用はできないだろうか。

●博多織の洗い方
1,薄色の場合、水4リットルにマルセル石鹸約茶さじ4杯の洗濯液で手早く刷毛洗い。
  折り目等の汚れの落ちにくいところは石鹸を直接擦り、
  毛の硬いブラシで擦る。
2,濃い色のものは、石鹸を薄めにする(色落ちのためか?)か、
  水4リットルに洗濯ソーダ茶さじ4杯の洗濯液で刷毛洗い。
3,すすぐときは布と布が重なり合って色が付着しないよう、手早く。
4,水の中で皺を作ると、あとあととれないので、
  絞ったりもんだりしてはいけない。
5,最後に湯4リットルに酢酸0.03リットル(盃一杯)の液に5分浸し、水すすぎし、
  丸く巻いてざっと押し絞り、乾いた大きな布に広げて、
  洗濯した布同士がくっつかないように、別の布をはさむようにして巻いて
  水気を取る。
6,糊は用いない。
7,薄色の場合は酢酸液ではなく、シュウ酸茶さじ4杯を水4リットルに溶かし、
  ここに約5分間浸す。よく水ですすぎ、あとは同じ。

※洗濯ソーダ・シュウ酸を揃えるのがたいへんそうです・・・。

●衣替えなどでしまう前の消毒法に、なんかすごいのがあったのでご紹介。
1,日光消毒 もっとも簡易にして効力も確か。
2,瓦斯消毒(ホルムアルデヒド消毒) もっとも家庭的でこの方法が簡単かつ効力も絶大な消毒。押し入れ上段の上の方に衣類を掛け吊し、押し入れの下部に消毒液を置く。
 消毒液の作り方・・・洗面器又はコップなどに水盃一杯、ホルマリン同一杯、  (30%以上のもの)、過マンガン酸カリ茶さじ2杯を順次混入すると、
 約1,2分間でガスが発生する。押し入れを密閉して
 このガスに衣類を充分かざして消毒する(人畜無害)。あとで外気に当てる。

※ううむ・・・。本当に人畜無害なのか?

※まだまだご紹介したいのだが、きょうはこの辺で・・・。
タグ:お手入れ
カンヅメながもち ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。