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コックリさん迷子

5月24日】黒蜥蜴@厚生年金会館
きょうの着物:深緑波ザッパーン単衣お召し・委託古着屋で5250円を
       洗い張り~仕立て替えたもの。
きょうの帯:赤黒に貝尽くしの染めと刺繍絽名古屋帯。
      オークション品、高かった。
きょうの帯揚げ:淡黄色綸子・1000円。
きょうの帯締め:黄緑色冠組。13000円もした。
きょうの半衿:もらい物ポリ塩瀬に自分で色を塗ったもの。
きょうの長襦袢:もう麻。小千谷縮長着用反物を長襦袢に仕立てたもの。
きょうの履物:寿司屋の下駄。
きょうの足袋:自作塗り塗り足袋。

※旅行から帰ってきて間もないのに、もう遊ぶ予定が入っていて、生活乱れまくりである。そもそも、旅行になど行くつもりがまったくなかったので、各種チケットを買ってしまっていて、今さらやめるわけにもいかないし(いいわけ)、とはいえ、ちょっと遊びすぎだ。
※基本的に、割引がないとチケットを取らないのが原則なのだが、これまで京マチ子・倍賞美津子・篠井英介の黒蜥蜴を見たが、やはり本家を見ずには死ねぬという気もあって、定価でチケットを買ってしまった。しかし、結論として満足である。行って良かった。
※なんせ、長いのである。会場に到着してから、10時10分終了と知りびっくり。間に15分間の休憩が二回。時代は現代に置き換えられているので、早苗さん・緑川夫人の着物が今モノであったのが残念だ。特に早苗さんのピンクの振袖は安物くさかった。
※高嶋政宏の明智はどうなんだろう?と未見の時点では思っていたが、この舞台に登場する明智は「猟奇的異常性欲をペラペラ饒舌に喋る」やや変態性のあるキャラクターであったので、彼の普段ならちょっとコワイ目つきがちょうど合っていたし、体が大きさも美輪氏に釣り合っていて、意外とよかった。
※今回の上演時間がこれだけ長かったのは、最後の場面で黒蜥蜴が自死するシーンを盛り上げるために必要な長さであったためで、不必要に長かったのではない。何事も批判的な目で見る私であるが、最後のシーンは不覚にも涙がにじんでしまったのだった。

※ヤマアラシのシジレンマ、と小此木啓吾氏の本などで読んだ覚えがあるが、黒蜥蜴と明智は実は互いに恋しているのだが、犯罪者と探偵という立場あっての恋なので、決して成就しない。近寄れば近寄るほど、互いに傷つけ合うことになるからだ。篠井英介の舞台では、明智が早苗さんを守ろうとする姿に黒蜥蜴が嫉妬し、よけいに恋情を催すという解釈が加わっていたが、美輪版では「出会ったときからすでに、自分を破滅させる予感がする危険な香り」を互いに感じ取って、憎いのだか恋しいのだかわけわかんない状態に陥る、という破滅的恋が感じ取れた。
※黒蜥蜴は美しいもののコレクターで、早苗さんの身体をコレクションに加えようとする、人間の心など欲しくもない認めたくもない人間だが、明智にだけは、心を含めて欲求したのだった。しかし、それがよりによって敵だったのだから、まさにヤマアラシのジレンマだ。
※今回の舞台装置は、東京タワーの場面をのぞいては陳腐さがなく、よかったと思う。また、雨宮役の木村彰吾という役者さんの存在感や声の通りなど、印象的だった。同行の友人も帰り際に彼の名前を確かめたくらいだから、おそらく多くの観客の印象に残ったことだろう。
※帰り道、心斎橋に出るつもりで見当をつけて歩く。なぜか阿波座方面にいることに気づく。進路変更したつもりが、最終的に西大橋の駅にたどり着く。お互いがお互いを頼りにして、というかどちらもリーダーシップをとることなく、いわば「コックリさん状態」で歩いているためであったが、夜風に吹かれての思わぬ散歩は気持ちよかった。いつかは必ず電車に乗れるという保証付きで、しかもその後の予定がない場合(誰かを待たせているとか)の迷子は、楽しいものだ。しかも同行の友人ものんきで、焦ったり怒ったりしない場合に限るが。

※ついでに方向音痴・迷子について、いい文章があったのでご紹介。
「・・・姉の方向音痴は昔から人並みはずれて有名だった。もし、「迷子」のコンテストなるものがあったら-まさか、そんなものはないと思うけれど-彼女はおそらく「天才」と呼ばれたに違いない。/ それはつまり宿命的なもので、「短気」で「あわて者」でありながら「自信家」でもあった父の血を、姉がそっくり引いてしまったのだと母がよく嘆いていた。自信たっぷりに道を間違え、およそ誰も想像できないような道のりを引き返すことなく歩きつづける-ありし日の父とまったく同じように、姉はそれを繰りかえしていた。/ (略)・・・「おもしろかったぁ」 自信をもって迷っているので、たぶん不安もあまりなかったのだろう。もしかすると、不安さえなければ、迷子は楽しいものなのかもしれない-隣で姉を見るうち、僕はときどきそんなことまで思うようになった。」(『暮しの手帖 16号』連載小説「それからはスープのことばかり考えて暮らした8 遠まわり」吉田篤弘より)
※私には弟はいないが、私のことを書かれているのかと思った(妄想)。自信をもって迷っているとか、自信家という点はどうかな?とは思うけれど、これだけ天才的に迷って、しかも楽しい気持ちもないとは言えないというのは、じつは同類なのかな。ま、とにかく待ち合わせの前に道に迷うことだけはしない方がいいのは確かだ。

※思い出して追記
※旅行でできた、足のかかとの水ぶくれは、今日には固く角質化しつつある。これがホメオスタシスというものか。少し違う気もするが。人間の体はちゃんと適応してくものなのだなあ。もう全然、歩くのが苦にならない。道に迷っても平気なくらいに。
タグ:単衣 御召
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