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怠慢をフォローするはずが

【6月8日】
※きょうのニュース23より、後藤田正治・元副総理の言葉。
「付和雷同はイカンよ」。

※定期購読している「季刊Ki-mono」(繊研新聞社)の最新号が届いた。郵便屋さんがわざわざ玄関まで持ってきてくれたので変だなと思ったら、創刊40周年記念号で、いつもより大きく、ポストに入らなかったためだった。
※一応、業界紙という位置づけなのだが、この特別号は「KIMONO姫」以来のムック本のような体裁・構成だ。なんでわざわざ素人向けみたいなものを業界関係者向けに作らなくちゃならないのかなというのが、最初の読後感。しかしつらつら考えるに、これまでこの業界の人というのは、実際の消費者の今の動向に無知というか無関心というか、まあ、現状認識できていなくて、ここ2~3年のうちに着物を着始めた人たちがどういうスタンスで、どういうものを着たいと思っているのかまったくわかっていない人が多かった(いまだに「お茶習っているのですか」と問いかけるセールストークが聞かれるのはそのためだろう)。妙に「着物のことはよく知っている」という自信というかプライドというか思い上がりが強いせいかと思うが、バンバン出版されるキモノ本を一冊も読んでいないのがバレバレだった。
※季刊Ki-monoは、そういう自ら知ろうと努力しない業界人に自動的に届く、素人向けキモノ本の圧縮版を作ろうとしたのかな、というのが今のところの感想。
※怠慢な業界人用に作ったものだと仮定して、マズイなーと思うのは、けったいな格好をしている初心者基準に商品開発が進むことに拍車をかけることになるのではないかということ。もうすでに「アンティーク着物が流行っている、らしい→復刻友禅とか銘仙柄のプリント作ればいいじゃん」的安直な商品が横行しているのが、さらにひどくなりそうな予感(悪寒)がする。


※ファッションリーダーの一人として取り上げられている業界人が、どうしてあんな見るからにペラペラのポリの着物を着て笑っていられるのか不思議だ。いいものをたくさん見てきたら、あんなの着る気にならんだろうと思うが。柄だけ昔風で色がうっとおしく、中途半端でどうしようもないものを「20代30代のお母さんにオススメ、入学式・入園式にもぴったり」などという、とんでもないコメントが載っているが、人に恥をかかせるつもりだろうか。
※新しい着物ファンは、特別な場所や機会でなくとも、お洒落として着られる着物が欲しい、とは思ったはずだ。上記の着物は、そういう目的ならぴったりだが、どうしてその「ケ」の着物を、ハレの場所にまで流用できるという勘違いを流布させようとするのか。
※式典に着ていけるようなものは、たいてい嫁入り箪笥の中に入っているものだ。それが日常に応用できないから、普通に、気張らずに着られるものが欲しい、というのが昨今の傾向だと思う。また、嫁入り着物そのものを持っていない人も多いと思うが、そういう人はそもそも式に着物を着ていこうとは思わないし、その必要もない。
※もうちょっと先のことを考える人はいないのか。このまま行くと、これまで固くてつまんなかった部分はほぐれていくだろうが、同時に「ケジメ」「TPO]というものも失われてしまう。そこは無法地帯だ。
※着物を着たことも、じっくり見たこともない編集プロダクションのお姉ちゃんの請負仕事でできているキモノ本ならともかく、創刊40周年を迎えた業界紙としてはあまりに近視眼的だと思う。
※大したものを見たことも着たこともない小娘レベルに合わせては、全体のレベルが落ち込む。今はこういうトレンドだ、と紹介するのはいいけれど、本当に美しいもの、いいものを守っていく姿勢も必要だろう。


※何年か前の初詣で、近所の神社で振袖姿のお嬢さんを2人、別々に見かけた。お一人はおそらくおばあさまかおかあさまのものと思しき淡い黄色ベースの総絞り。髪はおかっぱで、なんの飾りもなかった。帯もお太鼓か、せいぜい立て矢か文庫。もうお一人は美容院仕上げのパイナップルで、振袖は・・・あえて語らない。もちろん帯は飾り結びで、ふわふわ白ショール付きであったことはいうまでもない。
※この例では、あきらかに「ものの善し悪し」が如実に表れていたのだ。着るときにあらゆる技巧を凝らしても、ものの善し悪しは覆されない。もちろん、グズグズに着ているとか、汚れているとか、左前に着ているとか、そういうことがないという条件だが。
※普段はまあ、どんなものでも個人の好みと可処分所得にあわせて、ポリだろうが綿だろうが、センス次第でお洒落を楽しめばいいのだ。しかし、礼装にまでそのアイテムを持ち込むというのは明らかに越境だ。
※業界人の怠慢をフォローするはずの業界紙特別号が、小娘レベルの勘違いを流布させるツールになっては本当にマズイ。
※付和雷同する人が多くないことを切に願う。
タグ:雑誌

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