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アンハッピープライス

【12月13日】

※あっという間に日がたってしまった。この時期、ボーナスを受け取る人はちょっとうれしいと思うけれど、支給する方としては色々たいへんだ。業績があまり良くないけれどなるべく出したい、が、あまり出せない。頭の痛い問題をなんとかクリアしたら、気力が萎えてしまったような。

※そんな中でも着物雑誌が発売され、ざっと目を通したりもしていた。なんだかなーと思ったのが「美しいキモノ」の別冊「きものセミオーダーガイド」掲載の商品群。「ハッピープライスで」という謳い文句通り、10万円前後、5万円前後、一番安いのは4万円。キモノとして着るためには、これに仕立代や周辺機器代が加算される。合算すると+4万円くらいだろうから(少なく見積もっても)、20万弱~8万円強、というラインナップだ。それがどうも、垢抜けないのである。欲しいと思えるものがほとんどないのだ。私は、もともと現行品にはあまり食指が動かない傾向があるが、それでもたまに「いいなァ」というのもある。この「ハッピープライス」品には、一点も食指が動かない(48000円の小紋が、どう見ても「ポリですか?」というものだったのでビックリした)。

※昨年のリーマンショック以来の不景気、デフレ競争、という流れの中で、この企画は「お手頃なお値段でおあつらえ」というものなのだろうが、労力や費用に対する効果がどうも低すぎるような気がした。もちろん、いいなァと思うものは80万くらいしたりもするのだが、その4分の1の費用で4分の1の喜びがあるかといえば、16分の1くらいの感じだ。どこかに「妥協しました」感が漂うのだ。妥協するんだったら、もうリサイクルでいいんじゃないか。ああ、でもそうすると新品が売れなくなって、京染めの職人さんが困るんだ。

※じゃあ、リサイクルでは見つからないよね、というようなものを出せばいいのじゃないだろうか。染めてしまって問屋さんに流すものだったら、リスクの少ない、多くの人が好みそうな色柄にすればいいと思うが、セミオーダーなんだから受注生産、リスクは少ない。となると、価格を抑えるための少ない色数や高度な技を使わない方法で、気の利いた柄を提案すればいいと思う。たとえばワイングラスとか馬とカッパとか猿とかウマヅラハギとか、まあ何でもいいからおもしろいもの。それなのに、なぜか「お花」「縞」「格子」がメイン。これならリサイクル屋で充分見つかる。売る気あるのかなあ?

※ひょっとしたらハッピープライスというのは、消費者にとってのハッピーではなくて、京染め職人さんたちにとってかもしれない。ありものの型で染めたものを雑誌で宣伝して注文をとれれば、宣伝費だけの出費で利益が出る。新たなデザインを創出して型も作っていては利益が出ないだろう。とはいえ、おもしろいものが欲しい、リサイクルでも何でもいいからというような考えは私だけかもしれず、あの雑誌の読者の多くは何が何でも新品でなきゃ、という層なのかもしれぬ。

※でもたとえば、シミなしの、4320円で買った古着を仕立て直すと、3万円弱ですむ。それを、最低でも8万円強の「セミオーダーきもの」と並べたとき、ほとんど遜色ないと思う。だったら、やっぱりセミオーダーは違うわねえ、という印象を与えられるようなものにしないと、まじめにオーダーしたお客様に申し訳ないだろう。たとえが「4320円」なのは、ちょうど古着屋で買った縮緬小紋がハッピープライスものと似た感じだったので具体的な数字になったのだが、それが2万円であったとしても、胴裏・八掛を取り替えでも、ハッピープライスものよりも安い。もう一つの懸念は生地がわからないことだ。表示価格は向こうが指定する生地に染めた場合のもの。もしもう少しいい生地に変更すればさらに増額となる。不景気な中で売ろうと思うのだったら、これなら染めてもらいたい!と思わせるような色柄を出すべきだろう。京染め職人さんの方が、もう少し工夫や努力が必要なのじゃないだろうか。

※消費者もハッピー、職人さんもハッピー、になってこそ本当のハッピープライス。現状では原価の安いものをそこそこの値段で売って、職人さんの仕事を増やそうキャンペーンみたいで、消費者にとっては、オーダーするほどのものでもない着物を手に入れることになるだけで、アンハッピープライスな気がする。
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